1980年代に欧米で発展したGIS(Geographic Information System:地理情報システム)は、
1990年代に入ると日本でも急速に普及してきました。これにより政府も1995年に
『地理情報システム関係省庁連絡会議』を設置して基本方針を示し、
日常業務に広く活用されるようになり、現在ではGISのシステム利用範囲は、
地図を利用するあらゆる分野の領域に及ぼうとしてきています。
この政府の基本方針は、1995年09月に内閣内政審議会の主宰により、
国土庁国土情報整備室、建設省国土地理院を事務局として設置されたもので、
翌1996年12月には
「国土空間データ整備及びGISの普及促進に関する長期計画」がとりまとめられました。
これまでの行政事務の情報化は、
事務の簡素化や能率化の為に個々の行政事務だけの情報化(個別型)でありましたが、
今後の情報化社会ではあらゆる情報が互換性と統合性を併せもつ標準化が
必要不可欠となってきています。
地理情報システム(GIS)に関する国際標準につきましても
国際標準化機構(ISO)において標準化のための専門委員会(TC211)が設けられ、
1996年から国土地理院との共同研究によって『ISOの最新標準案に準拠しつつ、
日本の国情への適合や実運用における検討』を行い、
地理情報標準第2版(JSGI2.0:Japanese Standards for Geographic Information 2.0)を
作成するなど、国際標準化の検討を行なっています。
今後は、より一層の普及を図る為に、ISOにおいて国際規格となった項目より、
順次日本工業規格(JIS)として制定されていく予定となっています。
1995年1月に発生した「阪神淡路大震災」の教訓等を生かし、
政府は本格的なGIS普及に向けた施策を策定し、GISを推進していますが、
これは2002年の「世界測地系」の導入に伴い、地理情報システム(GIS)と衛星測位の
連携の拡大が要因しているものと考えられます。
2007年03月22日に測位・地理情報システム等推進会議で策定された「GISアクション
プログラム2010」や08月29日に施行された「地理空間情報活用推進基本法」に基づき、
国土交通省国土計画局においても2008年04月15日「地理空間情報活用推進基本計画」が策定され、
現在では様々な取組みが行われています。
その基本理念等には…
○ 国土空間データ基盤(NSDI)を形成し、地理空間情報の整備と提供、
GISや衛星測位の利用推進、人材育成、関係機関の連携強化等による総合的・体系的な施策の実施
○ 地理空間情報の活用の推進に関する施策が相乗効果を発揮するよう、関係施策を実施
○ 地理空間情報活用推進基本計画の策定と施策の実施に関し、関係行政機関の協力体制の整備
…などが考慮され、基本的施策として、
◇ 施策の策定・実施に必要な調査・研究の実施
◇ 行政における地理空間情報の活用
◇ 知識の普及 ◇ 人材の育成 ◇ 個人情報の保護 などや
地理情報システム(GIS)に係る施策として、
◇ 新世代のGISの整備及び活用の推進
衛星測位に係る施策として、
◇ 地球全体にわたる衛星測位システムの運営主体と連絡調整
◇ 研究開発、技術実証、利用実証、利用促進 …などが計画されています。
これらの施策により、地理空間情報を高度に活用できる社会の実現を目指し、
☆ 行政の効率化・高度化 ☆ 安心安全、国民生活の利便性の向上
☆ 国土の利用、整備、保全 ☆ 新産業・新サービスの創出
☆ 弱者保護力の強化
…について、効果が期待されています。
2007年03月22日 2006年度から概ね5ヶ年の政府のGISに関する計画として「GISアクション
プログラム2010 〜世界最先端の「地理空間情報高度活用社会」の実現を目指して〜」が
策定されました。
これまでの地図データ整備に関する課題としては
1.地図の誤差、図面間の不整合により地図データが重ならない
2.地図データの共用が十分になされておらず、地図整備の重複投資がある
3.地籍調査が進捗していない
…などが挙げられていますが、それらの現状を理解して検討し、今後のGIS政策の課題と新たな
展開を行うために「目指すべき地理空間情報を活用した社会の姿 〜「地理空間情報高度活用社会」
の現実〜」の
1.行政の効率化・高度化
2.国民生活の利便性の向上
3.産業・サービスの発展・創出
4.国土の利用、整備、保全
…が考えられ、高度に活用される社会の実現を目的としようと策定されました。
今後のGIS施策の具体的な展開としては、
1.地理空間情報の整備・提供に係る施策
2.地理空間情報の利用・活用に係る施策
3.GISの推進に係る基礎的条件の整備
4.国、地方公共団体、民間等の参加と連携の強化
主な施策としては、
1.基盤地図情報の整備・更新
2.個人情報保護、データの二次利用、国の安全に及ぼす影響への配慮
3.基盤地図情報提供のワンストップサービス(国土地理院)
4.地籍図・登記所備付地図の整備の推進
…の4つの項目が考えられています。
詳しくは、http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/02/020320_.htmlをご覧ください。
産官学一体化を目指して、NPO法人かごしまGIS・GPS技術研究所(KINGGT)との交流を始め、
2008年度より、熊本大学の位寄教授が会長、本間准教授が事務局長に就任されている
「くまもとGISクラブ」との連携が始っており、ワークショップへの協力や参加、または
共同発表会と称したGISに関連した業務等の発表や意見交流会を開催しております。
また、2008年度におきましては、
建設業協会や各協同組合を対象とした「管理技士CPDS講習会」において
「GISの現状とこれからの活用」という題目で講師を行うなど、
社会や地域に貢献できるよう、様々な努力を重ねております。